今回のまごころブログの担当は管理栄養士の伊藤です。
タイトルに書いた「最後のワンスプーンまで」という言葉は、私が新卒で入職した病院時代にお世話になった栄養科長の言葉です。病院時代はこの言葉を合言葉に、最後の一口まであきらめない。そのために努力する精神を栄養士として学びました。そして、今でも私の座右の銘になっています。
食欲が落ちてきた方の中には、「何を食べてもいいと言われたけれど何を食べればいいかわからない」とお話しされる方もいます。そんなときには、ぜひ栄養士に相談してみて下さい。
お話しする中で、よく食べていたもの、好きな味つけや食材などを伺っていくうちに、きっかけが見つかる方もいらっしゃいます。
また、熱を出した時にひんやりしたアイスやゼリーをおいしく感じるように、口内炎がある場合は‟軟らかく、薄めの味つけ”、吐き気がある場合は‟冷たくさっぱりしたもの”など症状に合わせた食事が食べやすいこともあります。在宅療養中のメリットは、‟自分で選べること!” 食べたいタイミング、食べたい食事など、ぜひ食事を楽しむことをあきらめないでほしいと思います。
先日、当院で関わらせていただいた最後のお食事についてご紹介します。
人生の最後をご自宅で迎えたいとのことで、当院の訪問診療が始まりました。入院中、栄養は点滴から摂取、お口からはとろみのついた水分のみを召し上がっていました。看護主任より「退院したらサーモンが食べたいとご本人がおっしゃっているけど、食べられる?」と相談がありました。
言語聴覚士と事前に打ち合わせ、その後、一緒に訪問。奥さまにご用意いただいたサーモンを摂食嚥下機能が低下されている方でも食べられるよう調理し、ゼリーのお粥と共に召し上がっていただきました。
「うまい!!」
という言葉とともに、とても素敵な笑顔を見せていただきました。
また年末が近かったので嚥下食の年越しそばもご提供。年末にご家族さまが集まった際に、ご一緒に召し上がることができたそうです。そして、亡くなる前日、故郷のお漬物が食べたいとのことで、嚥下食のお漬物を少量お口に含み、味わっていただきました。
ご本人さまの食べたいという強い思い、ご家族さまがご本人さまの意思を尊重いただけたこと、他スタッフとの連携などが合わさって実践できたことだと思います。
どうしても悲しいお別れをする場面は出てきてしまいますが、「食べさせてあげられなかった」という後悔ではなく、「最後に○○を食べる事ができて良かったね」と話せるように、今後もそのお手伝いができればと思っております。
管理栄養士 伊藤