防災対策について考える


10月25日(金)に第21回千葉在宅を考える会を開催しました。

ご参加、ご協力いただいた皆さまに、心より感謝申し上げます。

 

今年は、1月1日の能登半島地震に始まる1年でしたので、何よりも『防災』について考えていくべきということを念頭に置き、テーマを「地域で考える防災対策-実効性の高いBCP策定のために必要なこと-」として開催することといたしました。

 

個人または事業所単位での防災、準備が非常に大事なのは言うまでもありませんが、被災時はお互いにいかに助け合うか。共助、公助の観点も必要だろうと、有識者にご登壇いただきました。

 

 千葉市総合政策局 危機管理部 防災対策課の景山さんからは、千葉市の防災対策についてご説明がありました。

  • 分散避難→避難所の密集回避のため。在宅避難として自宅2階への垂直避難も。
  • ハザードマップの確認。
  • 倒壊リスクの把握→S56年に建築基準法が改正。それ以前の建築物だと倒壊リスクが高い。
  • 携帯用トイレの準備推奨。
  • 防災グッズの確保とローリングストック。
  • 車中泊避難→場所は民間と協定しており、千葉市では現在10ヶ所と正式に提携している。
    https://www.city.chiba.jp/sogoseisaku/kikikanri/bosai/shachuhaku.html
  • 指定緊急避難場所および指定避難所を把握しておく。
  • 千葉市の緊急情報提供サイトの登録を。
    https://city-chiba.my.site.com

 日本医科大学千葉北総病院/日本DMATインストラクターの寺井さんからは、令和元年の台風15号の際のDMATの活動内容と在宅サービス提供者へ期待することをお話しいただきました。

 DMATは災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チームで、主に搬送(調整)支援、看護支援、情報作成支援など行なうと。

 台風15号の際は印旛地域で活動されており、情報があいまいだったということで、

 

「情報を制する者は災害を制する。」

 

という言葉が身に染みた災害だったそうです。

 DMATの役割は、基本72時間以内の急性期の活動だったが、それ以降のフェーズでの災害関連の課題への対応も重要視されてきており、徐々に後ろのフェーズ(~亜急性期、慢性期)に役割を広げてきているそうです。なので基本的には災害拠点病院や一般病院への支援ではあるものの、社会福祉施設などでの二次災害、健康被害の低減も支援するようになってきており、地域の医療保険体制が整うまでDMAT活動は続くようになっているとのことでした。

 在宅サービス提供者に対して、平時から利用者リストの作成と、

  • ハザードマップ(地震・風水害)
  • 耐震性(S55年以前の建物)
  • 人工呼吸器、在宅酸素

をチェックしてみてはとアイデアをいただきました。ここからまず始めてみたいところです。

 

 千葉県社会福祉協議会 地域福祉推進部 ボランティア・市民活動センターの牧内さんからはボランティアセンターについてお話しいただきました。

 社会福祉協議会には必ずボランティアセンターが設置されており、需給のマッチングをしているそうです。以前はマッチングに課題があり、ボランティア余りや逆に不足する事態があったようですが、ボランティアへの理解も進み、またICTの活用も相まって事前登録が進み、だいぶスムーズになったようです。

 被災時は他県、他市町村からの応援を期待しがちで、もちろん必要なケースもありますが、日ごろから地元でのボランティアや関係団体とつながり、災害時に地元だけでも活動できる準備が大切だとのことでした。実際に令和元年の台風15号では地域の狭いエリアでも停電被害はまだらであり、近隣間での協力で乗り切ることが可能なケースもありました。逆に被災が少なく支援可能、という情報を後から知ることもありました。

 当院の診療同行看護師 湊さんからは災害支援と難病看護師の活動から見えた課題をお話ししてもらいました。

 熊本地震では災害直接死の4倍の災害関連死(急性期でなく、慢性期~復興期)が生じており、そのフェーズにアプローチするDC-CAT(Disaster Community-Care Assistance Team)として活動した報告がありました。

 DC-CATは現役の看護・ケア職の専門家集団で、助かった命のその先の「生きる」を支え、災害関連死の阻止を目的に、避難所や高齢者施設で活動されています。

 またBCPの概要についても説明していただきました。

 災害対策マニュアルが、各リスクに対してどう対応するかを示したものでその緊急対応・初動活動を示す個別事象ごとのマニュアルであるのに対して、BCPはオールハザード(全災害対応型)アプローチであると。

 BCPは介護事業所では2024年4月からの義務化により、その策定を完了したことと思います。多くは事業所単位での想定だったのではないでしょうか。機関型、連携型、地域型とBCPを分類した時に、最終的には地域BCP策定に向けて、自助、共助、公助の観点からの準備を交えて、準備をすすめたいところです。

 実際の石川能登半島地震での活動での経験を踏まえてのご発言もありました。

 

「災害は社会の弱点をあぶりだす」

 

もちろん有事だからこそやるべきことも多数あるかと思いますが、平時から、平時の課題を一つずつクリアにしていくことが大切なのかもしれません。

 

登壇者の皆さんからのお話を聞いて感じたのは、防災に王道はないということ。

日々の準備の積み重ねの重要性を再認識できたので、まずは明日から一つずつ手掛けていきたいと思います。

 

医療法人社団まごころ
四街道まごころクリニック

理事長/院長 梅野 福太郎