謹んで新春のお慶びを申し上げます。
旧年中は格別のご厚情を賜り、誠にありがとうございました。
多くの関係者の皆様方に支えられ、1年間を走り抜けることができました。
本年も変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
さて、2024年は1月1日の能登半島地震で年が明けました。未だに復興が道半ば、という情報を耳にするたびに胸が苦しくなる思いです。当法人のスタッフの身内にも被災者がいる状況で何かできないか。思案し、行動しています。
10月には第21回千葉在宅を考える会を「地域で考える防災対策〜実効性の高いBCP策定のために必要なこと~」として開催しました。地域の在宅医療に従事する皆様が、今後の震災などに事前に準備するきっかけとなっていれば幸いです。
2024年の日本在宅医療連合学会大会は、大会テーマを「在宅医療を紡ぐ」として、千葉・幕張メッセで7月20日・21日に開催されました。
一般参加登録者は4000名ほど。招待者や企業、ボランティアなど関係者総数では5000名近くの方々に支えられて、無事に大きな問題もなく開催することができました。実行委員の一人としてホッとひと安心、感慨深いものがありました。
昨今はさまざまな勉強会、セミナーがハイブリッド開催となり、効率性からついついオンラインで参加しがちですが、本会でリアルにその会の熱気を体感することは非常に刺激的でした。一部のシンポジウムや特別講演は後日オンデマンドで視聴でき、教育講演と銘打ってオンデマンド配信のみのコンテンツもあり、介護職向けにも構成されていたので非常にバランスよく開催されたのではないかとあらためて感じました。
2025年の日本在宅医療連合学会大会は6月14日(土)・15日(日)に『在宅医療の未来を語ろう〜2025年問題に向き合い、2040年に備える〜長崎から全国へ』というテーマのもと、長崎県長崎市の出島メッセ長崎にて開催されます。多くの発表で学びを得るとともに、また参加者の皆様と深く交流できればと思います。
2024年は研修医の受け入れに加えて、今年度よりスタートした千葉大学医学部の5年生の地域臨床実習の受け入れを行ないました。医学生の受け入れは、1〜2年生の早期体験は受け入れていましたが、今回は初めての5年生の地域臨床実習でした。
医師法の改正により令和5年度から、医学生が臨床実習(5・6年次)開始前に受験する「共用試験」が公的化されたことにより、臨床実習において医師の指導監督のもと、医業を行うことができることが明確化されました。どちらかと言えば、お客様になりがちな臨床実習ですが、学生の立場で医師の監督下で一定の医療行為ができるためか、学生さんの積極的な姿勢が印象的でした。早い段階で地域医療を体験してもらい、地域医療、ひいてはその人の“生活”を意識した医療を提供できる医師が増えればと願っています。
病診連携について、去年は課題意識をもって取り組みました。繰り返し丁寧に、具体的なケースでの連携を重ねることによって、一定の手ごたえを感じました。大病院から紹介されたケースで何かあったときの緊急入院の受け入れ(バックベッド)に関しては、逆に在宅側が急遽退院となったケースを積極的に受け入れることにより、バックベッドとしての受け入れをご理解いただけるケースが増えてきた印象です。
また、各病院主催での地域連携会もしばしば開催され、病院単体で医療が成立するフェーズから、病院がしっかりと地域と繋がり、一丸となって地域を支えることを目指すフェーズに移行しようとしていることが実感された1年でもありました。
これまで皆無だった病院から地域への情報ICTツールも開始し、これまでの紙やFAX、電話中心だった情報共有が、まだ課題はあるものの一歩前進した印象です。
疾患別としては、千葉間質性肺炎在宅ネットワークミーティングとして、千葉大学病院呼吸器内科の先生方、患者支援部の皆さんと地域の在宅医が繋がることができました。連携の課題感を共有し、まずは1ケースごとの連携を、と話ができました。間質性肺炎など重篤な疾患の場合、病院→在宅医への紹介は当事者からは“見放された”という思いになってしまいやすいです。そのため、その後の経過を丁寧に説明し理解を得て、ご本人にとっていかに“安心”な療養生活に繋げるかをイメージしてもらうことだ大切だと思います。
当法人の位置する四街道市の健康まちづくりも前進しています。
千葉大学、岩淵薬品が2023年4月に健康まちづくり共同研究部門を設立。2023年11月には四街道市と3者の共同研究協定が結ばれています。
健康寿命の延伸、健康格差を縮小するためには、個人の行動変容だけでは限界があり、社会環境の質の向上が重要となってくるとされています。
- 緑地が多い地域に暮らす高齢者には、うつが1割少ない
- 歩道が多く歩きやすいまちでは認知症リスク半減
- 社会参加割合が高いと要支援、要介護認定率が低い
などです。
つまり、まちづくりが大切で、それは個別の取り組みのみでは困難で、コレクティブインパクトという、企業や行政、NPO、市民など様々な分野の人々が各領域を超えて協力し、社会問題に取り組むことで生まれる成果だとされています。
年明けにも四街道鈴木市長さんも参加する参加型市民講座も予定されており、支援者の一人として今後の四街道市が楽しみです。
当法人の訪問診療に目を向けると、2023年までは利用者数はしばらく常時280~290名で推移していましたが、2024年の4月以降、さらに多くのご依頼をいただき、(円滑にサービス提供まで繋げ、)12月時点では340名前後の方々をカバーするになりました。
- 認知症で困っているが、本人は自覚がなく受診に至らない。
- これまでかかりつけ医もなく、だいぶ動けなくなってきたが今さら受診することに気が乗らない。
- 入院中で病気は治ったが、食べられないので退院できない。
と地域包括支援センターから、様々な個人、家庭として課題あるケースへの依頼が後を絶ちません。また認知症のケースは、認知症初期集中支援チームの役割も大きくなってきています。
国立社会保障・人口問題研究所が2024年11月に公表した「日本の世帯数の将来推計」によると、全国の65歳以上の単身世帯は、2020年時点13.2%に対し、2050年には20.6%まで高まるとされています。
2月21日(金)に『高齢独居・おひとり様世帯に地域はどう関わるか?』と題して、第22回千葉在宅を考える会を開催します。
単身世帯者が年を重ねた際に、その身元保証や生活支援をどうするか・・・気になるところです。ただその手続き論だけではなく、身寄りがない人が孤独を感じない、生きているとき、死ぬときに幸せと感じる支援、社会について議論したいと思います。
毎年3月に、法人全スタッフにて次年度の事業計画発表会を行なっています。去年は各部門ごとにMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)、行動基準を策定してもらい、定期的に行動基準に即した業務ができているかを考えてもらいました。
その影響か定期的な個々の面談においても、MVVや行動基準に照らし合わせた振り返りの言及も増え、実際に高まるニーズに応えつつ、残業時間の改善にも繋がっています。
生産性を向上する。余力を作り、その時間で必要な方へのニーズにさらに応える。
まごころ一丸となって今年も日々成長、改善を繰り返していきたいと思っています。
本年もどうぞ宜しくお願い致します。
医療法人社団まごころ
四街道まごころクリニック
理事長/院長 梅野 福太郎